放医研と理研は、アルツハイマー病のアミロイド蓄積と神経細胞死に、カルバインという酵素が密接に関与することを解明しました。これは、放医研分子イメージング研究センター分子神経イメージング研究プログラムの樋口真人チームリーダーらと、理研脳科学総合研究センターの西道隆臣チームリーダーらの共同研究による成果です。
アルツハイマー病ではアミロイドと呼ばれるタンパク質の塊が蓄積し、これにより神経細胞を死に至らしめます。その過程において神経細胞の中でカルシウムの増加が生じることは知られていたのですが、本研究では、カルシウム増加に反応して活性化するカルパインが、アミロイド蓄積に伴う神経細胞の傷害を促進するのみならず、アミロイド蓄積そのものも加速することを明らかにしました。
このことは、将来的にカルパインの阻害剤を用いて、アルツハイマー病の発症機構を全般にわたって阻止する画期的治療法が実現しうることを示しています。
さらに今回はカルパイン活性を制御した際のアミロイド蓄積と神経炎症の変化を、ポジトロン断層撮影(PET)により生体を傷つけることなく捉えることに成功し、こうしたイメージング技術によりヒトでカルパイン阻害治療の効果を評価できることが示されました。
本研究は文科省委託事業「分子イメージング研究戦略推進プログラム」の一環として行われ、イメージングは放医研で、モデル動物開発は主に理研で行いました。今回の成果は米国の科学雑誌『FASEB Journal』のオンライン版に12月15日に掲載されます。