黒柳徹子さん 女優

1994年10月-月刊:介護ジャーナル掲載より

好きな仕事続けて40年、飢える子、老人へ心くだく

NHK専属のテレビ女優としてデビューしてから40年(当時)。トーク番組「徹子の部屋」、著書「窓ぎわのトットちゃん」などマルチな活躍ぶりが注目を集める最も有名と言っていいテレビ人である。その間に舞台に立ち、ユニセフ(国連児童基金)親善大使として世界各地を視察。印税で「社会福祉法人トット基金」を設立するなど福祉への働きかけも積極的だ。

●健康法はストレスためず好きなことだけをやる

テレビ出演の合間を縫って、年間6カ月は女優として舞台に立ち、ユニセフの仕事もこなしと、黒柳さんのスケジュールはぎっしり。さぞや重労働だと思うが、60歳とは思えない若々しさと行動力に圧倒される。元気を保つ秘訣は、ストレスをためないことという。
「世の中には考えても仕方のないことってありますから、クヨクヨしないで、なるようになる、やるだけは、やってやる!スカーレット・オハラじゃないけど、“明日また考えよう”、昔からそう思ってます」もうひとつは、すすんでやれることだけをやっていること。かつて過労で入院したとき、そうすれば病気にならないと先生に言われたそうで、以来35年ほど病気とは無縁だとか。

●飢える子と接して11年、老人からのユニセフ募金に感動

ユニセフの親善大使になる人には国際的知名度があり、影響力を持っていて、子供を愛せる人、しかも永久に無償でという難しい条件がつけられている。黒柳さんが4人めの大使に任命されて11年。数々の発展途上国を巡ってきた。今でも予防注射が受けられない、教育も受けられない、水も安心して飲めない国がほとんどで、今日をどう生きるかそんなせっぱつまった子ばかりだという。
スーダンでは5歳の、孤児の男の子にいきなり、物も言わずにおっぱいをつかまれたことがある。「寂しかったんだと思うの。私なんて、その子のお母さんのイメージとは、ほど遠いはずなのに。飢えてる子は、人のやさしい声や手ざわり、愛情、そういうものにも飢えてるんです」
これまで日本中からユニセフに寄せられた募金は、なんと16億円。「1000円、2000円というお金が積もってこうなったんです。初めての老人年金をくださったり、夫と旅行するための貯金だったけど夫が亡くなったのでとか、そういうお年寄りからのお金がすごく多いんです」と感激している。

●日本は世界一不幸せな国、税金は老人のために

「老人が不幸せな国は、不幸せ」と黒柳さんは言う。日本は老人の自殺率が世界一と聞いたとき、世界一不幸せな国だと思ったそうだ。「残された人生を悲しい、不愉快な状態で過ごさなきゃいけないとしたら、政府のお金は、どこに使われてるんだろうと思います。家族で老人をみろと言ったって限度があるでしょう。そのできないところを国が簡単に補ってくれる、そういう風になっていないのは、とってもおかしいことです!
黒柳さんが納める税金は、収入の88%。「老人の方々が、今の状態を不愉快だと感じてらっしゃるとしたら、あのお金返してほしいわ。それに軍備的なことなんかに使うのは一切やめてもらいたいです」政府のみなさん、聞こえてますか?
第一線で走り続けている黒柳さんも、60歳。いたって楽天的な性格とはいえ、年老いて病を得たら「きっと、たまらないだろうな」と顔を曇らせる。「だから、私の将来の仕事はお年寄りのお話相手になることだと考えてるの。病気で話し相手を捜していらっしゃる方も多いだろうし。精神的な寂しさをまぎらわせてあげられればいいなと思って」
トーク番組19年のキャリアは、ますます花開きそうである。