仕事も人生も楽しく楽しく、フリーな立場で挑戦し続けたい
独特の過激なファッションでワイドショーやバラエティーなど数多くのテレビ番組やCMにも出演している、型破りな直木賞作家である。340冊にものぼる著書も、時代小説、恋愛もの、ミステリー、伝奇ロマンと実に多彩。活字も映像もどんどん挑戦していきたいと語る、燃える54歳(当時)。
●仕事は楽しく、転職が直木賞のきっかけに
直木賞作家となるまでに、20もの職業を転々とした志茂田さん。好奇心が旺盛で飽きっぽい性格ゆえと分析するが、仕事は楽しくというのが選択の条件という。
「仕事は行や修行じゃない。辛くて苦しいけど家族のために働くというより、自分の人生をエンジョイしたい、価値を見つけたい、そう考えると仕事も楽しくなるんじゃないのと言いたいですね。それもただ漠然と変えるんじゃなくて、やりたいことが見つかるまで結果として転々とするぶんにはかまわない。ただし、若いうち。大卒後10年以内ならそれができるんだな」
そして、回り道とも思える数々の転職が小説を書くきっかけになったというから、人生はわからない。
●枠をはずして自由自在に、時間の限り挑戦したい
ファッションや行動と共に、幅広い作風も注目を集めるところ。
「同じジャンルのものを書いてたら飽きて苦痛になってくる。苦痛になったら人生おわりだから。それとできることは何でもやる、これが僕の開き直りだし強み。活字の世界で吸収したことを映像の世界で吐き出せるからバランスがとれる。作家はこうあるべきと決めつけるのはおかしいわけで、むしろ他の職業に比べて自由にふるまえるんですから」
独特のファッションで自在に活躍しているうちに、人をそねんだりしなくなった、何か言われても腹が立たなくなったそうだ。「こんな見方もあったのかと思ったらある意味で楽しくなっちゃう。人生はちょっとした考え方の切り換えで、マイナスがプラスに変わるかもしれないんですよ」
そのときにいちばん楽しいことをやるのがライフスタイル。今後も、フリーの立場を最大限に生かして映画を作りたい、プロデュースもしたい、時間はいくらあっても足りないと挑戦的だ。
今は、いろんな枠を取りはずす時代だと、志茂田さん。「サラリーマンだって、出世やマイホームパパだけじゃつまんない。組織の中にいながらでも、アフターファイブに自分の世界を作ることはできるし、その方が人生をエンジョイできると思う。企業だって働きバチだからいいとは思わなくなってきてる」
耳の痛いお父さんたちも多いのでは?
●いくつになっても楽しい自分を、介護は心。形じゃない
老後観は特には持っていないという志茂田さんだが、年をとっても病気になっても、できる限り楽しい自分を維持していきたいと願っている。
「おふくろが94歳で老衰が始まり、自宅で女房が看ていたんだけど、先日亡くなりました。でも、生前は頭はしっかりしてるし気も使いすぎるくらいでね。おふくろを見ていていくつになっても、なるべく自分でやるという気持ちがないとダメだと思いますね」
介護は形ではなく、病人の気持ちをつかむことだと志茂田さんは言う。
「気性の激しい人ならやってほしくないと思うことも、気弱な甘ったれタイプだったら、してほしいのかもしれないし、介護は病人個々の性格が大きな鍵になると思います。市からヘルパーが毎日来るとか、風呂のサービスがあるというのは、あくまで形。本質は病人の心がわかるかどうかということであって、それはとても難しい問題ですね。将来、老人小説の大きなテーマになりますね」志茂田さんの老人小説ならぜひぜひ読んでみたい。