福留 功男さん テレビキャスター

1997年12月-月刊:介護ジャーナル掲載より

“波瀾万丈”の人生はすべての人にある生きてきた経験を若者に伝えてほしい

高知県生まれ。明治大学文学部卒業後、日本テレビ入社、報道部を経てアナウンサーに。
『アメリカ縦断ウルトラクイズ』などの司会で人気を確立。50歳、在職25年目にフリーとなる。
現在、日本テレビの『ズームイン朝!!』『いつみても波瀾万丈』、TBSの『ブロードキャスター』などの番組をレギュラー担当し、1週間に10時間以上も画面に登場する多忙な日々(1997年当時)。
そんな中にあって、「教育、高齢者、環境問題を取り上げていくことがテレビにかかわる人間の勤め」と語る気概の人である(当時55歳)。

◎年配の人を視野に番組作り新しい時代への突破口に

福留さんの朝は早い。
月曜〜金曜日までは4時45分起床、5時15分入局。7時スタートの『ズームイン朝!!』(〜8:30)生放送のためである。この番組のキャスターを福留さんが担当して10年、今や平均視聴率17%、毎朝4,000万人の人たちが見ていることになる。
この時間帯、NHK以外の他局は軒並み芸能ネタに時間を割いている。
ニュースとスポーツを中心に全国の話題を加えた番組での高視聴率は、福留さんの力に負うところが大きいだろう。
「信頼される番組を作ろうと思ってやってきた結果が高視聴率につながったのでしょう。
メイン視聴者は主婦ですが、僕の視野にはいつも年配の方が入っているんです。
例えば上高地からの中継の時、この素晴らしいお天気を見てください、今は行けないかもしれないけど、いつか行ってみてください、と話します。
すると年配の方から、希望が持てたというお便りをいただくんです」。
多くの人は“もの”にとらわれ、物欲を満たすことを最大の目的に生きている。
行政にかかわる人たちは“こと”にこだわり硬直している。
そんな世の中で、福留さんは画面を通して“ひと”を見つめ、“型にはまらないもの”の大切さを訴えている。
「歴史は人間の絆であり、その絆を切ってしまってはいけない。そのためには相手の立場に立って考え、行動していくしかないと思います。
今までわれわれは前ばかり見て来ました。
ところが10年前に、地球環境問題と経済発展は相入れないことを、高齢化がここまで進み、保険制度が瓦解することを予測できなかったのか。
そういう反省も込めて、時代とともに歩むのではなく、10年後20年後を見据え、なんとか新しい時代への出口を見つけるお役に立てれば…。僕もテレビも」。

◎今の福祉政策では解決できない若者のエネルギーに期待

福留さんは、ハードスケジュールでありながら、特別養護老人ホームの理事を務めて15年。
しかも、月に数回、ホームを訪れ、老人たちと土いじりを楽しむ。
“この花はなんて名前、えっそうですか、すごいなぁ僕の知らないことをたくさん知ってるんだ、もっと教えて…”そんな話が楽しくて行っているのだという。
一方で、そんな老人たちの現状を深く憂いもする。
生きがいを失った孤独な老人がいかに多いか。
共倒れになっていく老夫婦がいかに多いか。
本来なら昭和40年代頃から政府が手を打っておかなければいけなかったのに…と手厳しい。
「今の福祉政策では解決できない。
確かな保険もなく、自分で自分を看るしかない。
ところが人間は困ったことに、ぎりぎりのところに来ないと気づかないものなんですよね。その時には手遅れなわけです」。
さらに、「若者が老人介護を感情面で拒否するのは当たり前」だともいう。
「汚い、目を背けたくなるものの典型が老人介護ですから」。
ただし、阪神大震災のボランティアなどを見てから、やっと若者たちのエネルギーに期待できるかもしれない、と思えるようになった。
それでも、中高校のカリキュラムにボランティアが組み込まれるとか、履歴書にボランティアの経験を書き込み評価されるとか、社会形態が変わっていかないとその機運もしぼんでしまいかねない、と危惧する。

◎介護が明るいものになってほしい受ける側にも問題がある

「一番いいのは、介護が楽しいとまでならないまでも、明るいものになることなんですよね」。
どうして暗いのか…それは受ける側にも問題がある。
「僕はいいたい。あなたが生きてきた年月はなんだったのか、その生きてきた年月の何かを若者に残してほしい、と。
そうやって人間の絆が続くんだもの。
それが介護する人に介護される者が贈れる唯一のプレゼントだと思いますよ」。
福留さんが担当している『いつみても波瀾万丈』は、ゲストの人生をもう一度見直してみる番組だ。
「いつみても波瀾万丈の人生は1億2,000万人すべての人にあるんです。そう、あなたにも」。