海江田 万里さん 衆議院議員

1995年02月-月刊:介護ジャーナル掲載より(当時45歳)

ばらまきではなく、必要な人に必要な福祉を

売れっ子の経済評論家から国会議員へと転身して1年半。揺れ動く政治の波にもまれながらの活動はなかなか大変で、大忙しの毎日だとか。
このほど民主連合「民主新党クラブ」を結成。大変さに磨きがかかってきた。

◎評論家は気楽でいい生活スタイルはメチャクチャ

政治家と評論家を比べて、評論家の方が気楽でよかったと海江田さん。
「評論家は言いたいこと言えるし、責任もない。
当選していきなり与党になったから、言いたいことも言えなかった。
また政治家は仲間を作るのが仕事で、それがこんなにキツイとは想像以上でした。
そして、衆参両院では全然ちがうってこと。
衆議院には政局という、政策とは別の問題がある。
その点参議院は時間もあるから、テーマを持ってじっくり政策に取り組めますね」生活スタイルもすっかり変わった。
「夜は会合が3つぐらいあるし、新聞記者が来て夜中の1時までとか、メチャクチャです。
とにかく自分でスケジュールを決められないんですから。
こんなこと10年もやってたら死んじゃいますよ。
4〜5年で結着つけたいですね」健康づくりに関しても「何もやってないですね。
せいぜい国会内をエレベーターを使わずに歩くことぐらいです」と、かなりお忙しそうである。

◎年金ばらまきに危惧必要な人に十分な福祉を

給付開始年齢の引き上げなど、このほど年金制度が改正された。
現在は夫婦で、妻が国民年金を40年かけた場合、夫の厚生年金と合わせた年金収入額は現役サラリーマンの税込収入の7割程度が支給されている。
「問題はこれから若い人たちの税負担が多くなると、年金がサラリーマン収入より増える可能性もあるということ。
だから数年後にはまた見直す必要がありますね」我々庶民には、将来、確実に年金を受け取れるのかという漠然とした不安もないわけではない。
「それは何をさておいても守るべきです。国と国民との契約ですから」とキッパリ。
一方、「知人の経営者に『私も年金をもらう年になったよ』なんて、楽しそうに言う人がいるんですが、この人に年金が必要なのか」と、年金のばらまきを指摘する。
“必要な人に十分な福祉を”というのが海江田さんの主張。
利子所得、配当所得などで豊かな収入のある老人に、年金は必要ないという考え方だ。
「では、その必要な人をどうやって見分けるか、たとえばアメリカのようにソーシャルセキュリティーナンバー(社会保障番号)を設けて、個人の金融資産や収入、税金などのチェック機能を作るべきかなとも思います」高齢者福祉は年金給付、医療給付、介護給付の3本柱で考えるべきと言う。
「寝たきりになって医療と介護、両方の給付を受けた場合、年金はどうするのか。
なかなか難しい問題ですよ。
将来的には介護給付を厚くという方向になるでしょうし、公的介護保険をどうするのかが検討課題ですね」

◎少子化に歯止めを!土地利用権の開放を!

高齢化問題は少子化をワンセットだと、子供の大切さを訴える。
「ヨーロッパにも一時少子化傾向があったんですが、今は歯止めがかかっています。国民が、子供は大事だという認識を持ったからです。
フランスでは、クラスの30%が両親の揃ってない子供とも聞きます。
夫婦別姓の問題にも関わりますが、収入や差別の問題があって、今は女性が一人で子供を産みにくい状況です。
人間や社会の意識を変えなきゃいけないけど、差別を受けない環境づくりが必要です」高齢化問題の根源は、日本の住宅事情の悪さにあると主張する学者もいる。
老人ホームにいったん入ると帰る家がない、高齢者に部屋を貸してくれないといった問題だ。
「日本人は土地の所有権にしがみつきすぎるところがありますね。
所有権と利用権の切り離しをして、利用権を開放すべきだと思います。
買うことに執念を燃やさないで、定期借地権つきの土地でいい、そんな風に意識が変わらないと家も安くならないでしょう」