人様の世話にならず自分の老後は自分で賄いたい“お笑い”は病人には効果的なクスリ
経済が低迷している今日、景気に左右されないのが“お笑い芸能”。
その代名詞になっている「ヨシモト」は昨年31%の伸びを示し、その健在ぶりを世に示したが「景気が悪いので目立っているだけ。
ブームではなく毎年、右上がりに伸びています」という中邨秀雄社長。
吉本興業の創業は明治45年。
大阪をはじめ名古屋、そして今年3月には東京・銀座に劇場がオープンする。
劇団員の発表する場がないこと、そしてニーズに基づいてつくられるそうだが、福岡、札幌、夕張と地元の村おこしのひとつとして招聘されている。
世の中、とかく暗い話ばかりだが、全国に「ヨシモト」のお笑いで少しは気が晴れるかもしれない。
お笑いを商売としている吉本興業は、盲導犬のチャリティや重度心身障害者団体の講演会、そして「敬老の日」の劇場の無料開放などなど、福祉に対して早くから参画している、というよりも「させられている」そうだが、一般にはあまり知られていない。
“笑い”そのものに年齢の差はないが、老齢化社会を迎えるにあたり、お年寄り向けのお笑い番組の製作は、視聴率は稼げても購買力がつかないことがジレンマになっている。
今は若者のユーモアの勢いがある、世の中を引っ張っているということらしい。
しかし、諸病の根源はストレスから。
笑って吹き飛ばすという言葉通り“笑い”そのものの効果は大きいそうだ。
「倉敷の病院の先生が3年前から、ガン患者20人を連れて来られ、笑う前と笑った後にどのような効果があるのか実験されたのですが、結果は非常によかったそうです。
ガンの抗体性免疫のナチュラルキラー細胞が活性されると、学会でも発表されました。
また、アメリカでもこのような実験で、テキサスの病院で1日1回看護婦が患者を笑わせると、退院が早くなったそうです。
病人にとって笑うことが大変いいという結論が出ていますよ」と中邨社長は語る。
◎健康管理心がけるが、ボケは天命とあきらめる
平成3年に六代目の社長に就任した中邨秀雄社長は61歳。すでに、軽い糖尿病に痛風といった成人病を抱えているため、ハードなスケジュールの合間をぬって4週間に1度は健康診断を受けているそうだ。
そして、いま行っている健康法は歩くこと。
毎朝電車で通勤し週1回ゴルフ(写真)を楽しんでいる。
現在、息子一人と夫婦の3人家族。
親の介護経験もなく過ごしてきたそうが、老後は女房に頼ることなく自分のことは自分でしたいと自立指向だ。
「よく西川きよしと話しますが、とてもマネできないっていっています。
いろんな人達の話を聞いていても、お年寄りの面倒を見ることは大変だということがわかりますから、私は子供のお世話にならないようにしたいと思っています。夫婦であっても頼らずに、自分のことは自分で賄えるよう今から訓練すべきじゃないでしょうか。もちろん生きていくためには、お金で命が買える部分があるように思うし、そのための蓄えもいるでしょう。女房には私が死んだ後、お金が必要なら私の知らないところで、沢山保険をかければいいといっています」と語る。
二人の共通の趣味はゴルフを楽しむこと。
そして、自分一人で楽しむための趣味をもっている。
また、誰しもボケたくないものだが、ボケは天命だと中邨社長はいう「天命だから防ぎようがないと思っています。
医者の友人も多いのでアルツハイマーにならない方法などを聞いていますが見つからない。
医者自身もボケたら自分を殺してくれといっていますよ」今できることは健康管理と趣味を持ち、楽しく生きることに尽きるそうだ。
◎“お笑い”で地方文化のお手伝いしたい
東京にヨシモトが進出して10数年になるが、そのお蔭でギャグとして大阪弁が使われ認知されたのも吉本興業の功績である。
そして、今年3月末に銀座に劇場ができる。
また、地方からの吉本興業に対する経営管理の要請も多い。
「劇場は新しくつくる必要はないんです。
地方自治体の公共施設は全国に大小合わせて1500ホールあるんですが、実働時間は自治体の講演会が年間11日。
そして貸しているのが30日間。
残りの220日間は遊んでいるんです。
税金のムダ使いです。
その活用も考えています。
また、いま通産省の“芸術文化研究会”で芸術文化の振興を考えていますが、地方郷土の文化・芸能は、保存ばかり考えているんですね。
郷土芸能が地域の産業の振興に結びつかないといけない。
それが、観光になれば産業の振興、活性化につながればいいと思っています」と地方文化を育てていくことのお手伝いをしていきたいと中邨社長は語っている。
吉本興業の年商は約167億円、日本の映画のマーケットが270億円、洋画のマーケットが400億円以上。
映画に関わる人数と比べるとはるかに効率がいい。
西川きよしや桂三枝、明石家さんまと3億円以上のギャラを稼ぐ人気タレントも多いが、現在400〜500人いるタレントの中でヒットしているのは、いつの時代も1割程度だそうだ。
タレントそのものが製品であり、ヒットさせるための研究開発にもお金をかけているという。
野球と同じで1軍に上がれるタレントを養成するため、若者の登竜門になっている「心斎橋2丁目劇場」などもある。
ヨシモト流でいくとタレントは製品であり、食べせてあげているということになる。
明日のヒット商品の開発は日夜続けられている。